ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
やけど(放送内容 資料はこちら)
当院は全国でも有数の救急車受け入れ台数を誇り、救急医療は重要な業務の一つです。今回は、皮膚に関する救急疾患の中でも頻度の高い「やけど(熱傷)」についてご紹介します。
やけどは、処置のいらない軽症から、入院や手術が必要となる重症例までさまざまです。重症度は「深さ」と「面積」によって決まり、深さはI度からIII度に分類されます。
I度のやけどは皮膚が赤くなる程度で、数日で自然に治ります。II度のやけどでは水ぶくれが生じ、浅い場合は跡を残さず治癒しますが、深い場合は瘢痕が残ったり手術が必要になることがあります。皮膚が白く硬くなり、黒変したりすることがあり、神経が損傷しているため痛みを感じなくなるやけどをIII度といいます。
II度以上のやけどが全身の15%以上、またはIII度やけどが2%以上ある場合は入院が必要とされます。小児や高齢者では10%程度でも入院の適応となることがあります。
日常生活で多く見られるやけどの原因は、みそ汁やコーヒーなどを含む熱湯によるものです。特に乳幼児は、テーブルに手が届くようになると、スープやカップ麺の容器を倒してやけどを負うことがあります。また、炊飯器の蒸気に触れてやけどをする例もあります。小さなお子様がいるご家庭では、これらの配置に注意が必要です。
高齢者や糖尿病など病気をお持ちの方は、温度の感覚が鈍くなっており、湯たんぽや電気あんか、熱すぎる風呂などでもやけどを負うことがあります。特に糖尿病があると治りが非常に悪く、重症化しやすいため注意が必要です。また、ガスコンロで衣服の袖口に引火する事故も見られます。調理器具や暖房器具の扱いは油断せずに気をつけましょう。
では、実際にやけどをした場合はどうすればよいのでしょうか。まず大切なのは「冷やす」ことです。救急車を呼ぶ前に、流水で15〜30分間冷却しましょう。これにより、やけどの進行を抑え、痛みも軽減します。そのうえで医療機関への受診を検討します。迷う場合は、各自治体が運営する救急相談センターや、インターネットの「救急受診ガイド」などを活用するとよいでしょう。
蕁麻疹 (放送内容 資料はこちら)
今回は、皮膚に関する救急疾患の中でも頻度の高い「
救急外来でよく見られる皮膚の症状のひとつに、蕁麻疹があります。診察を行ったのが皮膚科医でない場合、痒みのある発疹が急に出現することを、すべてを「蕁麻疹」と表現してしまうことがありますが、これは正確ではありません。
蕁麻疹は、蚊に刺されたときのような、やや盛り上がった「
蕁麻疹は、食べ物によるアレルギー反応と思われがちですが、実際にはアレルギーが原因であることは少なく、多くの場合は原因不明です。虫歯の悪化、のどや耳の感染症など、体のどこかに炎症があるときに見られることもあります。
蕁麻疹の治療には抗ヒスタミン薬が最も有効です。強い痒みに救急外来で注射を希望される方もいますが、有効性が高く副作用が少ない最新の薬は飲み薬です。ただし、薬を1回飲んですぐに治まるとは限りません。自己判断で中止せず、指示通りに飲み続けることが大切です。数日たってもよくならない場合は、薬の種類や量を調整することがあります。
皮膚の症状だけでなく、息苦しさ、目や口の腫れ、吐き気や下痢、めまい、意識がもうろうとするような場合は、「アナフィラキシー」という重篤なアレルギーの可能性があります。すぐに救急車を呼んで、医療機関を受診してください。
一方で、広範囲に発疹が出現し数日間は持続し、ときに熱や関節の痛みを伴う場合は、ウイルス感染(はしか・風疹など)や薬疹(薬に対する反応)が原因となることが多く、これを「
中毒疹の診断や重症度の判断、原因の特定は皮膚科医でないと難しいことがあります。救急外来には皮膚科医が常駐していないこともあるため、症状が軽ければ皮膚科のある医療機関を診療時間内に受診することをおすすめします。薬のアレルギーの場合に、「スティーブンス・ジョンソン症候群」のような重症の皮膚疾患になることもあります。口の中や目の腫れ・充血が強い場合、水ぶくれが出てきた場合などは、早めに救急外来を受診してください。