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風邪ですか?

2023年11月23日放送2023年11月30日放送

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2023年11月23日放送

2020年以来、新型コロナウイルスが流行し、今年は夏の終わりからインフルエンザウイルスが流行し、さらにはプール熱と呼ばれるアデノウイルス感染症もこの秋、子どもを中心に流行しています。今回は、風邪とは何か、予防、治療についてあらためてお話ししたいと思います。

かぜは医療機関を訪れる最も頻度の高い病気の一つですが、皆さんは意外に風邪とは何かをご存じないのではないかと思います。といいますのも、体調がすぐれないと、詳細な症状をお話しされる前から「風邪をひいたみたいです。」と仰る方が多いです。
実はかぜの別名は急性上気道炎といって、鼻づまり、鼻水、くしゃみが主体です。のどの痛みが初日に現れることもありますが、軽い痛みで、物をのみこめないほどではなく、通常はすぐに治ります。風邪の患者に咳が出る場合は、一般的に症状が出てから4~5日目、鼻づまりや鼻水が治まる頃に発症するのが特徴です。

風邪の多くはウイルスが原因で、いくつかのウイルスが知られており、特定の病気と言うよりも似たような症状を引き起こすものの、完全には同じにはならない病気のグループとして捉えられています。
したがって、最初の症状が高熱で発熱から24時間以内に咳が出始めるインフルエンザは風邪とは言いがたいですし、この秋子どもに流行したプール熱は別名、咽頭結膜熱と呼ばれるアデノウイルス感染症で、これも通常の風邪とは異なるものと考える必要があります。

風邪ウイルスの一つと考えられていたコロナウイルスが変異して誕生した新型コロナウイルスも物が飲み込めないほどののどの痛みと高熱が出る点で、通常の風邪とは一線を画すのですが、軽症だと風邪と区別がしにくいケースも見られます。その他激しい気管支炎を起こすRSウイルスや肺炎を起こすメタニューモウイルスなども軽症の場合は風邪と区別ができないこともあります。
したがって、インフルエンザや新型コロナウイルスなどは風邪のなかでも特殊な物として、分けて考えた方がよいと言われています。

いわゆる風邪はライノウイルスというウイルスが原因となることが多く、秋から冬にかけて流行し、春先には減ってきます。よく、体が冷えると風邪を引くといわれますが、冷えや寒冷な環境にさらされることとの関連は科学的には証明されておらず、この季節的な流行が原因と言われています。
風邪の原因となるウイルスに対して人は免疫を作りますが、タイプ毎に免疫をつくるため、今までかかったことのないタイプのウイルスに感染するたびに風邪を引くことになります。
ちなみにライノウイルスには100種類以上のタイプがあるため、なかなかワクチンも作れないことがおわかりいただけると思います。

みなさんは、人が一年に何回くらい風邪を引くかご存知ですか?健康な子供は1年に8~12回、大人は2~3回風邪をひくと言われており、年齢とともに風邪を引きにくくなります。ただし、保育園、幼稚園に通うお子さんをもつお母さん、お父さんはお子さんから様々なタイプのウイルスをもらいますから、風邪を引く回数は多くなります。
50歳以上の中高年や高齢者にも鼻水とともにのどの痛み高熱がでるような病気が流行るということは、普通の風邪にはないことで、いかに新型コロナウイルス感染症が特殊であったかおわかりいただけると思います。

風邪を引いたかなと思って受診される際は、当たり前のことですが、いつからどんな症状ではじまったのかを医師にお伝えいただくことが大切です。

2023年11月30日放送

今回は、風邪の予防と治療についてお話ししたいと思います。
風邪ウイルスの感染経路は、風邪を引いた人から直接もらう場合と、咳やくしゃみによりウイルスを含んだ飛沫がとんで、それが眼や鼻や口に付着する場合があります。いずれも手を介してうつることが多いので、手洗いや手の消毒はとても大切です。風邪を引かないために手洗いをしっかり行うだけでなく、鼻をかんだ手や咳やくしゃみを抑えた手にはウイルスが付着しているので、人にうつさないように手洗いをすることも重要です。

また、日本ではうがいは風邪の予防に役立つと昔から信じられてきました。1回当たり20mlの水で15秒間のガラガラうがいを3回続けるのを1セットとし、これを1日3セット以上行うと1ヶ月当たり36%風邪を引く確率を下げるという研究結果があり、うがいは言い伝え通り風邪に予防効果があることがわかりました。また、意外にもヨードの入ったうがい薬を用いてもさらに効果があがるという結果にはならなかったと報告されています。

ビタミンCをとるとよいと言われることもあります。予防効果は限られているのですが、毎日200mg内服すると風邪を引いたときに治るまでの期間が10%程度短くなるという研究結果があります。劇的な予防効果とは言えませんが、副作用はないので試してみても悪くないと思います。

治療については、残念ながらインフルエンザや新型コロナウイルスのような特殊なウイルスを除いてきまったものはありません。インフルエンザの治療薬も発症48時間以内に内服した場合、即座に症状が改善するわけではなく、病気の期間を1~2日程度短くする程度であることをお知りおきください。
風邪の治療薬は、あくまで症状をやわらげるものとなりますが、実は、総合感冒薬は風邪の症状をしっかりと緩和するには不十分な量であったり、鼻づまりや鼻水を改善するための薬も2日間の有効性は証明されているものの、3日目以降は頭打ちになるという研究結果があります。眠気の少ないタイプではその効果もかなり限定的です。

抗生物質については、ウイルスに対する効果はなく、引き続き起こりうる合併症を予防する確率を遙かに超える副作用の発生率が問題となっています。大人では抗菌薬を内服しても治りが早くなるわけではなく、副作用が2.62倍起こりやすくなるという研究結果があります。
持病に気管支喘息がある方や慢性閉塞性肺疾患をお持ちの方は風邪の後に起こる肺炎が問題になることもありますが、トータルで考えると特殊なケースを除いては抗菌薬は内服しない方がよいと考えられています。
漢方薬は西洋薬とは異なる考え方で処方されますので、臨床研究という同じ土俵の上で論ずることはできませんが、症状と体の状態にあわせた処方が症状を緩和することは、経験的に知られています。

薬以外では亜鉛の効果について長年議論されています。インフルエンザなどの特殊な例をのぞいたかぜに限ったはなしですが、発症24時間以内にサプリメント程度の亜鉛を内服すると症状改善までの期間が3倍速くなるという研究結果があります。医療期間で処方される亜鉛を含む薬は亜鉛の含有量も多く、一般には風邪に対して処方されることはありません。

風邪はありふれた病気ですから、つい体調が優れないと風邪だと思いがちですが、一見風邪と思われるが実は普通の風邪ではない病気を経過と症状から適切に診断、治療する必要があり、特別な治療のない普通の風邪との違いをみおとさないことが重要です。

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