ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
精巣がんの診断について(放送内容 資料はこちら)
精巣がんは、男性の生殖器である睾丸にできるがんのことです。精巣は、男性ホルモンを分泌したり、精子をつくったりしている臓器です。がんというと60歳以上の中高年の病気を想像される方が多いかと思いますが、精巣がんは15歳から40歳くらいまでの方に多いという特徴があります。学業や就職そして恋愛や結婚と人生の大事な時期に突然やってくる病気です。
症状としては、精巣にしこりができたり、精巣が大きく腫れたりします。大事なことは痛みを生じることが少ないということです。痛みはないのだけど、精巣が硬くなって腫れてきたというのが典型的な症状です。痛みがなく、恥ずかしいこともあって他人に気軽に相談することも出来ず放置してしまったり、学業や仕事で忙しいからといって病院の受診が遅れてしまうことがあります。
精巣がんは進行が早く、診断が遅れると転移してしまう危険性があるため、精巣に異常を感じたらすぐに泌尿器科を受診することが大切です。発見が遅れて進行してしまうと、リンパ節に転移してしこりや痛みを感じたり、肺に転移して咳や血痰がでたり、脳に転移して頭痛やめまいがでたりします。そうなると治療も長期間必要ですし、治らず命に関わる事態になることもあります。
進行が早いため、触診やエコー検査で精巣がんが疑われたら、1週間以内に精巣を摘除する手術をします。4日間程度の入院で済むことが多いですが、急な話なので学校や職場の調整をしなくてはなりません。摘出した精巣を顕微鏡で確認し、がんのタイプを診断します。その他にはCT検査と腫瘍マーカーと呼ばれる血液検査をして病気の進行具合を確認します。
精巣がんの治療について(放送内容 資料はこちら)
治療法としては、転移がなければ、精巣の摘除手術だけで済むことが多いです。もし転移していると、その後は長期間の抗がん剤治療が必要となります。抗がん剤治療は、吐き気や脱毛など副作用があってつらい治療ですが、適切に治療すれば有効性は高く完治出来ることが多いです。逆につらいからといって抗がん剤治療を途中で中止したりすると、完治することが難しくなります。
最初に転移していないと判断されても、その後数年以内に転移してくることもあるので、治療後も定期的な通院が必要です。治療の効果や再発の確認は、血液の腫瘍マーカーやCT検査で判断します。学業や仕事で忙しい世代なので、通院がおろそかになってしまう方がいます。自覚症状が出たら受診すればいいやと安易に考えてしまい、症状が出たときに受診したら全身に転移してしまっていて、1年にわたる長期の治療が必要になったり、命を落としてしまう方もいます。必ず医師の指示どおりに定期検査を受けるようにしてください。たとえ再発したとしても、早期に適切な治療を受ければ完治が可能です。
標準的な精巣がんの診断・治療法はほぼ確立されており、病院間での差はありません。国や県が指定しているお近くのがん診療連携病院にまずはご相談ください。標準的な治療法を施行しても治らない難治性の場合は、がんセンターや大学病院などの専門病院で治療することをお勧めします。
最後に、精巣がんは、きちんと検査、治療すれば治癒する可能性の高い病気です。一方で発見が遅れて進行すると治りにくくなることも事実です。忙しいからといって、検査や治療を後回しにすることのないようにしてください。