ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2023年9月14日放送(放送内容 資料はこちら)
病院の放射線科では、主にCTやMRIなどの検査の画像診断を行っています。
その傍らで担っている業務に“IVR”(interventional radiology:画像下治療)というものがあります。この呼び名はまだ一般的ではなく馴染みないものと思いますが、IVRの範囲に含まれる「カテーテル検査」という言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
IVRというのは、画像装置を用いて体の構造を見ながら医療行為を行うことを指します。超音波装置、X線透視、CT、MRIなどの画像を見ながら針やカテーテルで処置することです。その一番の特徴は、2mmほどの小さな傷から体内の処置をすることができ、体の負担が少なく済むことでしょう。手術のような汎用性はありませんが様々な処置を行うことができ、大きな効果が望める処置であっても回復が早いことが利点です。
画像装置を用いることで、正しい道筋を描きながらカテーテルを進めたり、傷つけてはならない構造を避けながら針を刺したりできるので、ほぼ全身どこにでも到達することができます。それぞれの画像装置によって病変の見え方が異なりますので、CTでは見えにくい病変でも超音波やMRIを用いて処置できる場合があります。現代医療においては安全のためというよりも、目的の部位に到達するために欠かせない方法になっています。
1960年代に提唱され、1970年代後半に日本へ導入されたIVRは、先人たちの経験と工夫、装置や道具の改良により進歩してきました。まだまだ発展する余地があり、これからの医療を創っていく治療になるかもしれません。
話し尽くせませんが、次回は具体的な処置をいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
2023年9月21日放送(放送内容 資料はこちら)
前回はIVR(画像下治療)について説明しました。
今回は実際の処置について少しご紹介します。
画像下治療は針を用いるものと、カテーテルを用いるものに分かれ、適応範囲は全身に及びます。多様な道具によって、「注入する」「広げる」「つなぐ」「除去する」「焼く」「採取する」「固める」など色々なことができます。
ほとんどの処置で用いる針の太さは1.5mm以下です。CTを撮影しながら針を進める場合、頑張れば誤差3mm以内で目標に到達することができます。
腎臓がんに対する凍結療法をご紹介します。ガスが通る特別な針があり、その針の先端に3㎝ほどの氷を発生させ、さらに解凍することができます。これを腎臓がんに差し込んで、狙った位置で腫瘍を壊死させる治療が凍結療法です。従来の焼灼治療と比較して痛みが少ないのが特徴です。
カテーテル治療では、脚の付け根や手首から2mmほどの管を入れ、順に細い管を通していきます。血管内の処置で用いる一番細いカテーテルは0.6mmほどです。これらを自在に操って目標に到達し、狭くなった動脈を広げたり、瞬間接着剤で出血を止めたりします。
処置の際、「全身麻酔にしてほしい」と仰る患者さんが居られますが、局所麻酔で済むことにはメリットがあります。全身麻酔をかけると血圧が低下しますので、大出血で状態が悪い患者さんでは、原因がわかっていても手術できないことがあります。この場合も、カテーテル治療ならば止血処置を行うことができます。
すでに様々な治療があり、今後も新しい治療法が登場することでしょう。いずれも共通するのは、患者さんの痛みに寄り添える治療ということです。治療効果が大きくても、傷は最小限で済ませられます。画像下治療という選択肢があることを、覚えておいてください。