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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

女性アスリートの健康問題

2023年6月22日放送2023年6月29日放送

2023年6月22日放送

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2023年6月29日放送

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2023年6月22日放送(放送内容 資料はこちら

女性アスリートの健康問題への関心が高まり、産婦人科領域からの取り組みも始まっております。女性アスリートの健康問題は、主たるは相対的なエネルギー不足による健康への影響で、全身や骨の代謝、発育・発達面、精神面への悪影響、月経異常などを生じてきます。

この中でも、エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症は女性アスリートの三主徴と呼ばれ、エネルギーが不足すること、つまりは「運動量に見合った食事が摂れていない状態」から始まるとされています。しかし、エネルギー消費・摂取量をスポーツの現場で把握することは難しく、一般的に成人ではBMI17.5kg/m²以下、思春期では標準体重の85%以下の状態としています。

エネルギー不足が続きますと、脳のホルモンの分泌が抑えられ無排卵から無月経となり、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの低下により骨密度が低くなってしまいます。

エネルギー不足になる原因には、無理な減量計画、極端な食事制限、過度なトレーニング、食事についての正しい知識がないほか、精神面へのストレスなどがあります。

この改善には、食事量を増やすか、運動量を減らすかのどちらかになりますが、行動変化を起こすのに、アスリートのこころの状態が大きく影響します。中でも、女性アスリートは一般人口に比べて摂食障害の発症のリスクが2~3倍高いとされ、完璧主義や、いつもいい子でありたい、競争心や闘争心を持ち続けなければない、などのアスリートの陥りやすい心理状態があることも一因です。

アスリートにとっての健康問題は身体症状だけではなく、精神症状にも及び、医療者だけでなく、コーチや関係者、家族などが早くに気がつき、治療につなげることが大切です。

2023年6月29日放送(放送内容 資料はこちら

女性アスリートが抱える健康問題に、月経随伴症状もあげられます。代表的な症状に、月経痛が日常生活に支障をきたすほどひどい月経困難症。月経3~10日前の時期にいらいらなどの精神的不安定さや、腹痛、腰痛、頭重感、乳房痛などの身体症状が出現し月経発来とともに消失する月経前症候群があります。その他、経血量の多さが支障をきたすこともあります。

女性アスリートの現状として、国立スポーツ科学センターが630人に対して行った調査では、トップアスリートのうち月経困難症は25.6%、月経前症候群は70.3%、月経周期によるコンディションへの影響があったのは91.0%であり、パフォーマンスの発揮に月経随伴症状が影響しており、事前の月経対策が重要になります。

月経随伴症状の治療として、ホルモン剤であるピルの服用があります。次回の月経だけをずらす方法として、一時的な調節法で主に中用量ピルをずらしたい時期だけ服用するやり方と、年間を通して月経を調節する方法で、超低・低用量ピルを服用し、同時に月経困難症や月経前症候群などの治療をすることもできます。

「ピル=太る薬」という認識を持っているアスリートやコーチは多いことでしょう。しかし、近年さまざまな種類が登場し、体重が増えにくいとされるピルもあります。女性アスリートがピルを含め月経随伴症状の治療で薬を服用する際は、重要な大会の2~3ヶ月前から服用しその影響を確認すること。試合日程に合わせて月経周期を調節する時には、服用開始日と服用日数を確実に把握することなどが大事です。

また、漢方薬や利尿剤などは、ドーピング禁止物質を含んでいる可能性がありますので、服用しないようにしましょう。

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